11年振りとなるプロレスリング・ノア(以下NOAH)日本武道館大会と、史上3人目のメジャータイトル三冠を目指した武藤敬司の挑戦。
異なるベクトルだった2つの挑戦でしたが、化学反応が起きたことにより歴史的興行が生まれたことに間違いはありません。
2021年2月12日は記録にも記憶にも残る1日となりました。
まだご視聴になられていない方は、是非ABEMA無料配信をご覧ください。
NOAH「DESTINATION 2021 ~BACK TO BUDOKAN~」日本武道館大会
プロレスリング・ノアの再出航
11年振りとなったNOAHの日本武道館大会ですが、感染者増により緊急事態宣言の中、大会を実施しなければならないという状況に関係者の方々は頭を抱えていたことでしょう。
平日開催なのに、イベント開催20時というタイムリミット。
中止や延期も考えたとのことでしたが、時間を繰り上げるという最後の手段を決行し、目安となる20時ギリギリに終わらせることができました。
デメリットしかない状況にも関わらず、この日集まった観客は4196人。
昨年、新日本プロレスで行われた平日の日本武道館大会が3564人だったことを考えると、合格点が与えられる観客動員数ではなかったでしょうか。
稼働率が高く決して借りることが容易ではないという日本武道館。
今回の武道館大会は様々な縁で借りれた運命だったと、NOAHの武田取締役がnoteで語っていました。
運命さえもNOAHの味方に付いたのかもしれません。
近年のNOAHの集大成とも言える武道館大会は、大成功だと言える大会だったと思います。
“絶対王者” 潮崎豪敗れる
11年振りとなるNOAH日本武道館大会は、あっという間に終わってしまった幸せな時間でした。
中でも多くの観客及び視聴者を釘付けにしたのは、潮崎豪と武藤敬司のGHCヘビー級選手権だったことでしょう。
期待値を大きく上回るタイトルマッチになったと思います。
しかし、戦前は潮崎が負けた場合、何が残るのか想像できませんでした。
昨年1年間NOAHの至宝を守ったということは、NOAHのライバル達を殆ど倒してきたということです。
誰も倒せなかった潮崎を武藤が倒すことにNOAHの未来があるのか、NOAHの未来が作れるのか不安な部分もありました。
武藤敬司のメジャー三冠ばかりが取り上げられるのではないかという不安と危機感。
結果、武藤敬司にNOAHの至宝は奪われ多くのメディアが武藤の偉業を讃えたものの、NOAHの至宝を奪われたという悲壮感はありませんでした。
かつては新日本の闘魂三銃士だった武藤も、今はNOAHで闘うレスラーの1人と認識できたから。
決して外敵ではないレスラーの姿がそこにはありました。
そして、武藤に負けたもののチャンピオン潮崎は圧倒的に強かったという事実があったからです。
何より武藤の代名詞の一つであるフランケンシュタイナーを、あのタイミングで繰り出せたのですから。
天才と謳われ四半世紀以上経った今も、天才は天才のままだったと証明した試合でした。
フランケンで!!!!!!!! @ABEMA で視聴中 https://t.co/LCWTBNXgmJ #noah_ghc #ノア日本武道館 pic.twitter.com/ncoj8WaD2l
— プロレスリング・ノア (@noah_ghc) February 12, 2021
飛べなかったのか、飛ばなかったのか
史上3人目のメジャー三冠達成に沸いた武藤敬司のGHC戴冠でしたが、この試合のクライマックスはもう一つありました。
声を出せない会場の観客さえもどよめいた、武藤がコーナーポストに向かい登り始めた瞬間です。
武藤、まさかのムーンサルトをだすのか!? @ABEMA で視聴中 https://t.co/LCWTBNXgmJ #noah_ghc #ノア日本武道館 pic.twitter.com/6BMHHl36hd
— プロレスリング・ノア (@noah_ghc) February 12, 2021
この瞬間、多くのファンが期待したでしょう。
3年前に “永久封印” したムーンサルトプレスが見れるかもしれないと。
コーナーポスト最上段の一歩手前まで登ったものの、結果武藤はムーンサルトを繰り出しませんでした。
飛ばなかったのか、飛べなかったのか…
試合後のインタビューで、この時の心境をこの様に語っています。
『実は行こうと思ったんだけど、やっぱり身体が反応しなかったよ。恐怖心なのかなんなのか。行こうとは思ったんだよ。もうこれしかコイツ敗る技ないなって思ったから…』
この数秒間だけで物語が凝縮されており、もしかしたらタイトルマッチであることさえも忘れてしまっていたかもしれません。
GHCのベルトに挑戦表明する際、『ちょっと老いぼれているけど、そんな俺だって夢を見たっていいだろ。俺の夢に付き合ってくれ』と語った武藤。
メジャータイトル三冠を達成したことで一緒に夢をみることができましたが、今回の一戦でファンは新たな夢を見つけることができました。
もしかしたら、封印したムーンサルトを再び見れるかもしれないという夢をです。
武藤がメジャータイトル三冠を達成して生まれた希望
潮崎を破り新チャンピオンとなった武藤の元に訪れた清宮海斗。
早速、次期挑戦者に名乗りを挙げましたが、清宮には目指して欲しい夢があります。
それは史上4人目となるメジャータイトル三冠達成。
最年少での戴冠の可能性も残っています。
今の時代に他団体のベルトを巻くことは難しいことかもしれませんが、まだ武藤の年齢の半分にも満たない25歳の青年です。
既にGHCヘビー級王座を戴冠しているので、残るベルトはIWGPヘビー王座と三冠ヘビー級王座の2本。
目の前でメジャー三冠を達成した姿を目の当たりにしたのですから、清宮の脳裏に新たな目標が植え付けられたに違いありません。
まずは昨年口にした『レインメーカーを体感したい』を実現させるべく、オカダカズチカ戦の実現に期待し、NOAH日本武道館大会の感想を終わりたいと思います。