怪我をさせてしまった中嶋勝彦を批判すべきではない理由

中嶋勝彦【撮影:koba】
プロレスリング・ノア




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ロレスリング・ノア(以下NOAH)のN-1ヴィクトリー公式戦で起きたアクシデント。

中嶋勝彦の放ったPKが岡田欣也の顔面を捉え、レフリーが試合を止めました。

試合後は脳震盪の疑いがあるとして病院へ向かったが、岡田は自力で歩いて病院に向かったとのこと。

案の定、怪我をさせた形となった中嶋に対して批判的な意見が相次ぎました。

 

問題のシーンはNOAHの公式アカウントでもツイートしており、完全に岡田の顔に中嶋の蹴りが入っているのは確認できます。

当然、故意に顔面を狙ったはずはないと思いますが、この動画だけで判断したら中嶋を批判したくなる気持ちも理解できなくもありません。

 

ただ批判する前に、このシーンに至るまでの背景を考えるべきでしょう。

試合が3分17秒で終わっているということは、試合開始早々だったことが分かります。

蹴りの高さは岡田の顔の高さであったこと、そして試合序盤だったことを考えると、恐らく対戦相手が蹴りを避けることを想定していたのではないでしょうか。(あくまで素人の見解)

 

また8月11日から始まったリーグ戦の最終日であり、17日間で7回目の公式戦だったとことは忘れるわけにはいきません。

特に初出場だった岡田は、満身創痍でリーグ最終戦に臨んでいたはずです。

リ中嶋戦前の成績は6戦全敗。

リーグ最終日に結果を残したいという焦りは、後方回転エビ固めがすっぽ抜けるというアクシデントに変わり、中嶋のいつものムーブに対応出来なかったとも考えられます。

 

結果、脳震盪ではありませんでしたが下顎骨折で欠場することが発表になりました。

 

今回のアクシデントは残念ではありますが、怪我をした岡田も、怪我をさせてしまった中嶋も批判すべきではないでしょう。

闘っている以上、プロレスに怪我は付きものです。

プロレスラーはいつ、どこでも、怪我をするかもしれない覚悟を持って闘っています。

決して相手に怪我をさせたり、壊すつもりで闘っているわけではありません。

故意であるはずがないアクシデントに対し、『下手くそ』だの『二流』『三流』という言葉を一方的に投げるのは、ファンとして心が痛いです。

 

6月に行われたサイバーファイトフェスティバルで、DDTの遠藤哲哉が脳震盪を起こしたアクシデントの件もあったばかりなので、『またか』という気持ちは分かります。

ただし、『下手くそ』だの『二流』『三流』という言葉は、相手と同じ土俵で努力した経験がある人のみが口にできる言葉だと思っています。

私は『プロならプロらしい仕事をすべき』という表現が嫌いです。

なぜならば、プロが付く人だけが“プロ”なのではなく、どんな仕事をしている人でも“プロフェッショナル”な仕事を求められているから。

働いている以上、誰もが“プロ”なんだと思います。

 

プロレスは生物(なまもの)である以上、怪我やアクシデントは仕方ありません。

公にならないだけで、怪我をした状態で闘い続ける選手や、試合中の脳震盪は日常的に存在しているでしょう。

だからと言って怪我は気にすべきでないとは思いませんし、当然怪我は避けて欲しいと思っています。

ただ、ファンも覚悟は必要なのでしょう。

「プロレスラーの覚悟を見守る」のもプロレスなんだと思います。

 

岡田にとって悔いの残るN-1となってしまったかもしれませんが、この経験が将来糧になることを期待し、復帰を待ちたいと思います。

そして中嶋勝彦への批判や誹謗中傷が無いことを祈るばかりです。