最近、プロレスファン界隈が騒がしい
これは次期シリーズ『ワールドタッグリーグ2018』の出場チームが発表されてから、顕著に表面化してきたように感じます。
IWGPヘビー級チャンピオンのケニー・オメガがシリーズを欠場。
棚橋弘至と内藤哲也もシリーズの半分しか出場しません。
ファンクラブに入っても人気のチケットは手に入れることが難しく、高額な金額で転売されているのが現状です。
仮にチケットが取れたとしても、常に見切り席(コーナーの対角線上の斜め席)では、ファンクラブ加入のメリットを感じません。
推しのの選手は海外遠征を増やし、国内では行わないmeet and greet(撮影会&サイン会)が行われ海外優遇を感じてしまいます。
国内で熱望されるファンサービスは、海外では簡単に手に入る…
全ての不満の矛先は、“この言葉”に向けて疑問と不信感に代わっています。
それは…
海外戦略(世界進出)
新日本が保有するベルトの大半が外国人レスラーの物となったとき、すぐさまメイ社長がファンの気持ちを汲み取って、コラムという手段でファンの怒りを沈下させました。
この時、メイ社長は新日本の未来をこのように語っています。
『私は「新日本プロレス」を日本国内だけでなく海外にも広め、今よりもさらに大きく、少々のことでは揺るがないような強固な経営基盤をもった団体にしたいと思っています』
引用:新日本プロレス
そして、約束した言葉は…
“「新日本プロレス」の良さは変えません”
私は今でもこの言葉を信じていますが、この時伝わった言葉も継続して発信しなければ、すぐ忘れられてしまいます。
では、なぜ新日本は海外進出を強めるのか?
海外戦略を進めるメリットとは何なのか?
国内のファンにどう還元されるのか?
私のこの戦略の理由を、このように考えています。
すべては今の新日本のクオリティーを維持するため
新日本のクオリティーの維持とは?
新日本は国内のプロレス団体で、もっとも成功している団体です。
なぜ成功できているのか?
個性的な選手がリングの上で活躍し、主要な試合はライブ配信(公式戦はすべて配信)され、年々新しい選手が登場し話題に事欠きません。
一見当たり前に感じることですが、強固な経営基盤がなければ成り立たないでしょう。
国内で最も人気の高い新日本の選手は、年々その価値に見合うサラリーが必要になってきます。
仮に選手の絶対数が同じでも、選手にかかる支出が同じということはないでしょう。
ヤングライオンが無期限で海外遠征に行くこと、凱旋帰国して一流の選手の仲間入りをすることは、それだけで多くの支出が発生します。
つまり、選手の成長は選手にかかる予算を増やさなければならないということ。
NJPW WORLD(ライブ&オンデマンド配信)で見れる動画も、加入者数が増えなければ配信数を増やすことはできません。
配信を増やすということは、撮影する人件費が増えるということ。
未だにベストオブザスーパージュニアもワールドタッグリーグも、全試合ライブ配信はありません。
その年のライブ配信及び後日配信は、昨年のNJPW WORLD加入増加数に応じて、予算が決められることでしょう。
つまり、WORLD加入者が増えなければ配信を増やすことはできないということ。
近年はスポット参戦でも多くの新しい選手が登場し、人気レスラーとの対立はビックマッチの注目カードになっています。
Cody、ザック・セイバーJr.、ハングマン・ペイジ、マーティー・スカル、ヤングバックス…
外国人レスラーが必要ないと考える方もいるかもしれませんが、この選手たちが全く出場していなかったらどんな対戦カードになっていたでしょうか。
新日本に対戦の奥行と対立関係を増やしたのは、間違いなく外国人レスラーの存在です。
外国人レスラーの存在は、グローバル展開という側面だけではないということがわかるでしょう。
そして、これらの選手にも多くの支出が発生します。
これらのことは、新日本プロレスのクオリティーを維持するための一部です。
すべて共通していえることは、新日本の売上の絶対額が増えなければ実行不可能ということ。
では、売上の絶対額を増やす方法で、もっとも確実な方法とは何か?
それはWORLD加入者数の増加です。
現在約10万人の登録者数をほこるNJPW WORLDですが、およそ4割が外国人ファンと言われています。
その内、約3万人が今年1月に加入していますが、約8割の新規加入者が新規外国人ファン。
まだまだ開拓の余地がある外国人のNJPW WORLD促進こそ、売上の伸びしろというわけです。
【追記】
以前の私のブログで、メイ社長が就任直前時に書いた記事がありました。
ここには半年前の新日本の収益割合を記してあります。
今現在、新日本の売上は約49億円(平成30年7月現在)。
その内プロレス観戦時に皆さんが払うチケットの収入が約5割を占めますが、国内においてこの収入を大きく上回ることは困難です。
また、動画配信サービスであるNJPW WORLDはその2割(月額料x12か月x登録者数)程度になります。
勿論、テレビ局と共同で運営しているので実際の額は半分程度でしょう。
まだまだ売上の規模としては小いですが、外国人ファンの加入が右肩上がりである現状を考えると、大きな伸びしろがあると思われます。
※追記終わり
つまり、新日本が海外戦略を進める一番の理由とは…
NJPW WORLD加入者の促進であり、加入者増加で増える利益は新日本国内興行のクオリティーを維持する為に必要な支出になるということ
現在、海外戦略という言葉だけが、ひとり歩きしています。
新日本が強固な経営基盤を作るためという説明だけでは、国内ファンには伝わらないとことでしょう。
“思っていることは口に出さないと誰にも何も伝わらない“とは、新日本を代表するレスラーの言葉です。
そして、もっと大事なことは“伝える”ことではなく“伝わる”こと。
誤解されないよう言いますが、これは会社批判でもメイ社長批判でもありません。
むしろ、メイ社長には期待しかないです。
多くのファンに伝わっていないのなら、伝えることも必要ということです。
プロレスにおいて、すべてを説明することは粋ではありません。
しかし、プロレスを知ったばかりのファンも数多くいます。
これは、最低限の説明が必要な時代に突入したということではないでしょうか?
ただ“過渡期”という言葉だけで終わらせてはいけないと思うのです。