内藤哲也とタイチの“プロレスは時に残酷である”雪の札幌ビッグマッチ

“独り言考察”




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冬の札幌では何かが起きる…

私達はこの言葉に期待し過ぎたのかもしれません。

 

札幌大会初日が終わり、タイチはIWGPインターコンチネンタル選手権で起こるだろう事件に付いて、ヒントを出しました。

『間違うなよ、お前ら。俺が何か起こすんじゃないんだ。今までだって、そうだった。必然的にここで何かが起きてたんだ、ずっと。冬の札幌で。何かが起きてんだよ、勝手に。俺が起こすんじゃないんだ。だから、「何か起きるかもしれないね」って言ってんだ』

引用:新日本プロレス

 

タイチじゃない第三者によって、何かが起こる…

結果、想定外の事件が起こりました。

 

内藤哲也の入場の後ろから忍び寄る影。

さっきまで真剣な眼差しを向けていたタイチが、その影が見えた途端、悪魔の笑みを浮かべます。

内藤が気配を感じ振り向いた瞬間、その顔に鋼鉄のラダーがぶつけられました。

タイチが言っていた事件とは、同じ鈴木軍の飯塚高史による奇襲だったのです。

 

動けない内藤にさらに追い打ちをかけます。

横たわる内藤を起こして担ぎ、マットの無い花道にブラック・メフィストを敢行。

 

ピクリとも動かない内藤は、ヤングライオンに担がれ医務室に消えます。

その間、三澤トレーナーと菅林会長が現れ、この試合をノーコンテストにするかどうか協議されました。

 

通常だったら、すぐに試合続行不可能と判断されたことでしょう。

それでも協議に時間がかかったのは、この試合が札幌大会2days2日目のメインイベントだったから。

6,000人以上の観客が見守る中、簡単にはノーコンテストと判断できなかったことでしょう。

 

苦渋の決断を迫られる間、なんとか歩ける程度にまで回復した内藤がリングに戻ります。

フラフラになりながらも、試合開始を催促する内藤。

試合続行可能な僅かな望みにかけ、ゴングが打ち鳴らされました。

 

力なく殴る内藤。

余裕の笑みを浮かべるタイチ。

 

息の根を止めるためにタイチが用意したものは、リングサイドに隣接して組み立てたテーブル。

これを内藤が切り返せなかったら、この試合は終わっていたことでしょう。

 

このテーブルへのパイルドライバーで九死に一生を得た内藤は、再三訪れるピンチを切り抜けタイチから3カウントを奪いました。

 

この試合を見て、私はあるチャンピオンの言葉を思い出しました。

“プロレスは残酷であってはならない”

 

そして、この試合の感想を述べるならこう答えるでしょう。

“プロレスは時に残酷である”

 

雪の札幌2連戦の大事なメインイベントを任されることになったタイチと内藤。

内藤に肉薄する人気があるタイチも、地元札幌でサプライズを用意する必要性を感じたのでしょう。

ファンに妄想を楽しむ時間を与え、内藤ファンの反感を買うだろうサプライズを計画しました。

 

今まで以上にマナーを逸脱するファンから攻撃されることを覚悟で。

 

直前の公開調印式で内藤に“覚悟はあるか”と問われたタイチ。

その言葉に頷いたタイチは、確固たる覚悟を持って臨んだことでしょう。

タイチというプロレスラーを貫き通す覚悟を。

 

その覚悟に答えた内藤もまた、プロフェッショナルなレスラーでした。

 

ラダーで攻撃され、花道で相手の大技をくらい、動けなかなった内藤に試合をさせるなという批判もあるでしょう。

動けなかった内藤が逆転勝利でマイクパフォーマンスができることを、疑問に思う方もいるでしょう。

 

なぜ、立てるのか?

なぜ、試合ができるのか?

なぜ、試合後マイクパフォーマンスができるのか?

 

それは、覚悟ができているからではないでしょうか?

 

何が起きてもいいように、最善の準備をする。

怪我のリスクを抱えながら、ギリギリの攻防を繰り返す。

どんなに身体が悲鳴をあげても、お客様への感謝の気持ちを伝える。

 

プロレスラーだからできることを、地で体現しているんだと思います。

 

メインイベントを任された内藤とタイチの覚悟が、多くのプロレスファンに伝わっていることを願うばかりです。

“残酷な試合”になってしまったかもしれませんが、プロレスである以上“残酷な試合”も必要なんだと思います。

 

試合をすること、タイチに勝つことを諦めずリングに上がった内藤哲也。

そんな内藤相手に、最後まで手を抜かず全力で闘ったタイチ。

2人の一歩踏み出す勇気に心打たれた私は、“プロレスを分かっていない”ファンなのかもしれません。

 

 

雪の札幌2連戦が終わり、結果ロスインゴの全勝で幕を閉じました。

 

試合後、タイチの健闘を讃えながらも内藤が言ったあの言葉が気になります。

『タイチ選手には“もう一歩”踏み出す勇気を期待しますよ』

 

今シリーズが終わるまで、ロスインゴと鈴木軍の対戦カードはまだまだ続きます。

これで終わりという訳ではないでしょう。

2・11大阪でさらなる事件が起きるか、起きないか。

その答えは勿論…