トニー・カーンが語った新日本との業務提携の重要な事実

AEWxNJPW合同興行【撮影:koba】
“独り言考察”




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AEWxNJPW合同興行「Forbidden Door」の開幕が明日に迫り、AEWと新日本プロレスの話題で持ちきりの昨今。

AEWの社長であるトニー・カーンが、新日本と週刊プロレスの合同インタビューに答えました。(ZOOMで)

中でも注目だったのは、新日本との業務提携についてです。

この業務提携は、両社のレスラーが互いのリングに上がったことで実現したんだ。2019年の初めにAEWを立ち上げた時、俺はニュージャパンと一緒にやりたいと、すごく意気込んでいた。そして、2020年1月4日の『WRESTLE KINGDOM』で、クリス・ジェリコがヒロシ・タナハシと試合をした。AEW世界王座のチャンピオンとしてね。俺はAEWのオーナーとして、あの大会でクリス(・ジェリコ)とジョン・モクスリーがどのような形でAEWを代表できるのかを考える必要があったんだ。俺はニュージャパンをとてもリスペクトしているから、どうしても何かしらのかたちでAEWを参加させたかった。それで、彼らが『WRESTLE KINGDOM』に参戦できるよう、AEWでの彼らのスケジュールを調整したんだ。

それと、俺はクリス・ジェリコに、「ニュージャパンのビッグマッチには自由に参戦しても良い」という許可を与えた。彼はAEWのトップスター選手を代表し、2019年の『DOMINION』でオカダと対戦した。そして、2020年1月5日にタナハシと闘った時には、彼はAEWのチャンピオンだった。この頃から、AEWとニュージャパンは本格的に関係を築き始めた

引用:新日本プロレス

 

トニー・カーンのインタビューの一部を抜粋しましたが、私が知りたかった情報が記載されていました。

それは業務提携 “時期” です。

 

AEW創立メンバーは新日本に参戦していたヤングバックやCodyらが中心だったこともあり、発足前後で新日本との提携や交流が期待されていました。

しかし、AEW発足後すぐに交わることはなく、新日本の選手がAEWに登場するまでかなりの時間を要しました。

恐らく、2021年の2月のAEWダイナマイトでKENTAがジョン・モクスリーを襲撃したのが最初だったと記憶しています。

 

AEWと新日本の提携に時間がかかった理由として、一部ファンの間では当時の新日本の社長だったメイ氏が原因という噂が流れていました

海外メディアの報道や一部の外国人レスラーのメイ氏批判の噂などは私もよく目にしましたが、どうやら真実は違ったようです。

 

メイ氏在籍時に提携されていたという事実

 

コロナ禍の影響を受け、2020年10月に新日本プロレスを退任したハロルド・ジョージ・メイ氏。

KENTAがAEWに乗り込んだのが2021年の2月なので、現大張社長に変わってからAEWとの交流が進んだという見方が強かったのでしょう。

新日本からメイ氏が離れたおかげで、AEWと業務提携が進んだというファンの声を見かけることもありました。

 

しかし、トニー・カーンがインタビューで語った通り、2020年のレッスルキングム辺りから新日本と本格的な関係を築き始めたと語っています

つまり、メイ氏退任後にAEWと提携関係を構築したのではなく、メイ氏がいた時に既に業務提携に向け関係性を深めていたということです

 

AEWとの関係構築に、当時新日本の社長だったメイ氏が深く関わっていたと言えるでしょう。

日本語を流暢に話せたメイ氏ですが、英語はネイティブに話せます。

交渉の場にトニー・カーンが登場するなら、同等の立場であるメイ氏が登場していた可能性は十分考えられます。

いわゆるトップ会談です。

社長の判断なくしては、会社と会社の業務提携は進展しません。

最終判断は社長の鶴の一声です。

 

恐らく、新日本アメリカ法人の大張社長と二人三脚でAEWとの関係を築いたのでしょう。

コロナ禍前はメイ氏も新日本のアメリカ大会運営に参加し、大張社長に指示を出していました。

もしかしたら、渡米中にトニー・カーンと会ってAEWと新日本の未来について語り合っていたかもしれません。

(新日本のアメリカ法人は新日本プロレスの子会社。当時の大張社長の立場はメイ氏の部下にあたる)

 

AEW発足後、すぐに提携しなかった理由

 

AEWとの関係構築に関わっていたメイ氏ですが、AEW発足当初から業務提携をしなかった理由を語ったことがありました。

2020年2月に行われたファン参加イベント「ハロルド・ジョージ・メイのぶっちゃけ・トーク」での一幕です。

 

普段聞くことのできない裏話を聞くことができましたが、この時創立したばかりのAEWとすぐに提携しない理由を語りました。

▪︎まだ設立したばかりの会社なので、今はまだ見守る時期

▪︎ただAEWの動向は常にチェックしている

 

あれだけ有能な選手がいたので人気が出ることは間違いないだろうと思われていましたが、会社として成功するかどうかは未知数と言えます。

結果的にAEW発足後すぐ提携していたら、2団体の交流はコロナ禍により分断されていたでしょう。

AEWがここまで大きな存在になったから、合同興行も世界中のプロレスファンに注目を浴びています。

先見の明があったと言わざるを得ないと言える状況です。

 

なぜメイ氏が名指しで批判されるのか?

 

海外メディアの報道で、AEWの選手がメイ氏を名指しで批判しているという趣旨の内容を目にすることがあります。

SNSでも目にすることもあるでしょう。

これだけ聞けばネガティブなニュースに思われますが、違う側面から見れば狙い通りだったと言えます

以前、メイ氏のセミナーに参加した際、部下へ難しいミッションを依頼する際、切り札として『社長を悪者にして構わない』と言っていました。

どういう意味かというと、交渉の切り札に『社長の命令』というカードを使い、怒りの矛先を変えるという手段です

 

社長直々に海外の選手のブッキングを行うことはないでしょう。

スタッフが窓口になるケースは多いと思われますが、出番やチャンスが少なくなることは選手にとって不満でしかありません。

選手を説得する手段として、『社長の判断』と言うパワーワードを使えば、交渉もスムーズに進みます。

本当はトップ判断ではなかったにしても、結果としてメイ氏の判断という印象だけが一人歩きした可能も考えられます。

 

日本人気質と外国人気質は大きく違い、チャンスを信じて待てる選手もいれば、すぐにでもチャンスを手にしたい選手もいるでしょう。

ビッグネームであれば、良い待遇を求めることは当然のことです。

一方で当時の新日本はNJPW STRONG発足前で、大所帯の選手層を国内だけで回していました。

木谷オーナーが2ブランド制を提言するほど、選手起用は切迫していた状態だったと言えます。

 

人気のある旬の外国人レスラーを贔屓するという選択もあるでしょうが、それをしなかったのが当時の新日本という印象を持っています。

外国人レスラーに対しても、長くから新日本に尽くしてきたレスラーに対しても、平等にチャンスを与えるというのが、メイ氏が下した判断だと思っています。

ハロルド・ジョー・メイ氏【撮影:koba】

 

誤解のないよう言いますが、メイ氏を名指して批判したと噂される選手を批判したい訳ではありません。

ヤングバックス然し、新日本に参戦してくれた外国人レスラーには感謝しかありませんし、今後も応援し続けたいと思っています。

 

今回のトニー・カーンのインタビューで明らかになった業務提携の詳細。

多くのファンに愛されたメイ氏ですが、一部ファンからAEWと業務提携しなかった戦犯として吊し上げられていました。

しかし、今回のインタビューでAEW関係構築の真っ只中にメイ氏がいたことは事実と言えます

これまで何度もメイ氏と話す機会があった筆者ですが、AEWのレスラーやトニー・カーンに対して『好きじゃない』などという発言は聞いたことがありません。

今回の記事で少しでもメイ氏の誤解が解け、名誉挽回に繋がることを祈るばかりです。

 

嫌な話題は忘れて、みんなで歴史的興行「Forbidden Door」を楽しみましょう。

AEWxNJPW合同興行直前番組は、今夜19時配信開始です。